相続登記とは、被相続人(故人)が所有していた不動産の名義を、法定相続人に変える手続きをいいます。
相続登記を自分で行う場合、知識がないと手間や時間がかかる可能性があります。
自分に負担なく、スムーズに手続きを進めたい場合は、司法書士に依頼するのがおすすめです。司法書士は相続登記を初めとする登記済不動産の相談に対応できるプロの専門家なので、相続登記もスムーズに進められます。
相続登記を司法書士に依頼すべきケースや司法書士の選び方、依頼するときの費用を抑えるポイントについてご説明しましょう。
相続登記とは?
被相続人(故人)の財産を相続する権利を有する民法で定めた者を法定相続人といます。
相続登記とは、被相続人が所有していた土地や家、マンションなど登記済不動産の権利(名義)を法定相続人に変更する手続きのことです。
相続登記において最初にすべきことは遺言書の存在確認です。
遺言書には次の3つの種類があります。
- 公正証書遺言
- 自筆証書遺言
- 秘密証書遺言
公正証書遺言と法務局に保管されている自筆証書遺言に関して交付される「遺言書情報証明書」は検認の必要がありませんが、それ以外の遺言書の保管者又は発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅延なく家庭裁判所に提出をして検認の請求を行う必要があります。
法定相続人以外の相続人に相続させる内容であった場合は遺贈登記になり、相続登記とは異なるパターンになりますので、以下、相続登記に焦点を当てて説明いたします。
相続登記において複数の法定相続人(以下、「相続人」とする。)がいる場合は、相続人全員で相続する方法と一部の人が相続する2つの状況があり、後者は遺言書などに従って相続登記を行うことになります。
相続登記の基本的な流れは、以下の通りです。
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不動産登記簿の状況を確認するために登記事項証明書を取得する
遺産分割協議書を作成する(相続人が複数人いて遺言書がない場合)
被相続人と相続人の戸籍関係書類などを集める
その他、申請必要書類を作成、収集する
管轄法務局で登記申請を行う
相続登記は自分で手続きを行うこともできますが、自分に負担なくスムーズに手続きを進めたいなら司法書士に依頼するのがおすすめです。
司法書士に相続登記を依頼すべきケース
相続登記は、基本的に手続きが複雑になりやすく特に相続人が多くなるほど手続きは更に複雑になり、自分で手続きを行う場合、時間や手間が多くかかります。
相続登記は頻繁にあるものではありません。そのため、多くの人が知識も経験もなく、何をどのようにして進めて行けばよいか分からないのではないでしょうか。
そんなときこそ、専門家である司法書士に相続登記を依頼するのがおすすめです。 司法書士に相続登記を依頼すべきケースついてご説明します。
相続人や保有不動産が多い場合
相続登記を行うときに相続人や保有している不動産が多い場合は、司法書士に依頼するのがおすすめです。
理由は、複数の相続人のうち一部の人が相続をする場合は、相続人全員の同意と戸籍関係書類、遺言書がない場合は印鑑証明書を添付する遺産分割協議書が必要ですが、所在が不明な人や会ったことが無い人がいる場合などは調査や対話が必要になります。
また保有不動産が多い場合は、不動産の数に応じてそれぞれ登記事項証明書を取得した上で詳細を確認してから手続きを進める必要性があります。
さらに、各不動産の固定資産税評価額証明書類なども必要になるので、保有不動産が多いほど書類の取得や手続きに時間がかかります。
自分に負担なく、スムーズに手続きを進めたい人には司法書士への依頼をおすすめいたします。
相続登記せずに長期間放置していた
不動産の相続登記を行わずに長期間放置していた場合に起こりえる問題としては、相続権が次の継承人に移動している代襲相続が挙げられます。
また、相続が発生した場合どんなタイミングでも相続登記を行う必要がありますが、相続登記をしようとしても困難になるケースがあります。それは、相続登記の長期間放置によって相続人が高齢化し、認知症等病気などで遺産分割協議すら進められないケースや相続人が所在不明になっているケースです。
さらに問題になるのは、不動産の名義変更をするために必要な転居先住所が記載されている戸籍関係書類が取得できないことです。
登記における所有者確認は、登記上の住所に住む誰それになるため、登記後に転居している場合は登記上の住所から現住所をつなぐ戸籍関係書類が必要です。
しかしながら、長期間放置していたことによって役所の書類保存期間を超過し履歴が削除されたりして相続登記をしようとしたときに必要書類が入手できないことがあります。
その場合は、代用書類が必要になります。 もしも不動産を長期間放置していた場合は、司法書士に依頼して対応してもらうのがおすすめです。
相続登記を司法書士に依頼する費用の考え方
相続登記を司法書士に依頼する場合、当然ながら依頼料が発生します。 しかし、司法書士に相続登記を依頼する場合、どのくらいの費用が発生するのか想像ができません。
そのため、司法書士に依頼する場合、どのくらいの費用が発生するのか事前にチェックする必要性があります。
費用の概要
結論から言えば、司法書士に相続登記を依頼した場合の費用は一概には言えません。
なぜなら、司法書士が業務を行ったときに受けとる報酬は、各司法書士が自由に決定することができ、司法書士にどこまでの業務を依頼するのか、相続登記が必要な不動産や相続人の数や状況も千差万別だからです。
司法書士は、報酬の算定方法や諸経費を明示し、合意したうえで依頼を受けることが義務付けられていますので、複数の相続人がいる場合は、見積もりをだしてもらうために必要な調査時間や合い見積もりで比較する時間を念頭においておきましょう。
費用の見積もり方法
基本的に、司法書士へ支払う費用は報酬と実費を合算した金額になります。
司法書士に相続登記の見積もりを依頼した場合の報酬額の算定方法は、基本的にどこまでの内容で相続登記の手続きをやってもらうかによって変わります。
例えば、相続登記に必要な登録免許税や所有権移転登記などにかかる収入印紙代など税金や戸籍関係書類取得にかかる発行手数料や交通費などは実費ですが、遺産分割協議書や相続関係説明図の作成や相続人が所在不明な場合の調査などの業務に対するものは報酬になります。
つまり、実費はどの司法書士に依頼しても同額と考えられるため、報酬が司法書士への支払い額を大きく左右するといえるでしょう。
そして、費用を抑えたいならば、どこまで自分で対応するのか、どこから司法書士に依頼するのかを決めることが大切です。
相続登記の費用に影響を与える要因
相続登記の費用に影響を与える要因は、以下の通りです。
• 資産の価値と種類
• 相続人の人数
• 不動産登記にかかる費用
• 司法書士により異なる料金設定
資産の価値と種類
相続登記の費用に影響を与える要因として挙げられるのが、相続登記する資産の価値と種類です。 相続登記する資産の価値が高いほど、登録免許税額や相続税額は高額になります。
戸建てかマンション、アパート、土地など不動産の種類や建築物の建築年数や地域によっても資産価値は大きく変わるため詳細な確認が必要です。
相続人の人数
相続人の人数が多いほど司法書士に支払う費用も高くなります。
複数の相続人のうち一部の人が相続をする場合は、相続人全員の同意で作成される遺産分割協議書や遺言書がなければ相続登記は進めることができません。
相続人の中には、連絡先が分からない人や会ったことがない人もいるでしょう。
しかしながら、相続人全員の合意を得て、全員の戸籍関係書類等がなければ相続登記はできないため、時間や手間それに費用がかかっても調査や手続きは必要になります。
不動産登記にかかる費用
不動産の登記内容によって発生する費用も大きく変わります。
たとえば、所有権移転登記は贈与、売買、相続のパターンによって必要書類や税金が変わります。
他にも、所有権保存登記や抵当権設定登記、抵当権抹消登記など相続に関わる登記がありますので、司法書士には相続する不動産や相続人についての詳細を伝え、調査や書類取得にかかる時間や費用を含めた見積もりの明示を依頼しましょう。
司法書士により異なる料金設定
司法書士により相続登記の料金は異なります。
他の司法書士がよりリーズナブルである可能性も考えられます。従って、相続登記の依頼を検討する際は、複数の司法書士に見積もりを依頼し、料金の相場を把握することが重要です。
単純な金額だけでなく具体的な作用内容まで確認するようにしましょう。
良い司法書士を選ぶためのポイント
信頼できる司法書士を選ぶためのポイントは、以下の通りです。
• 司法書士の経験と専門知識
• 信頼性と評判
• 費用とのバランス
• 初回相談の重要性
司法書士に依頼するにあたって、スムーズに相続登記を進めるためにも、信頼できる司法書士を選ぶことがポイントです。
司法書士の経験と専門知識
司法書士に依頼する場合、司法書士としてどのくらいの年数を経験しているのか、どのくらいの専門知識を持っているのか調査することが大切です。
相続登記は状況次第で、調査や手続きに時間と手間がかかることがあるため、ある程度の経験年数や専門知識がないとスムーズに進めるのが難しくなります。
信頼性と評判
信頼性は看板では分かりません。依頼する費用が他と比べて安価であっても、適当に仕事をしたり、相性が合わなかったり、依頼を後悔することになっては安物買いの銭失いです。
また、相続登記は財産に大きく関わることであり、複数の相続人とつなぐ役割も担います。
信頼できる司法書士を選ぶためには、周囲評判を確認することもポイントです。
費用とのバランス
司法書士の料金設定は自由のため、自分が思っている以上に費用がかかる可能性があります。
依頼する内容と費用とのバランスが取れているかどうか、他の司法書士と比較して高額でないか、支払える額であるかどうかを確認することもポイントです。
初回相談の重要性
司法書士の中には、初回の相談料を無料とされている人もいます。
初回の相談が無料であれば気軽に相談ができる上、どのような人柄なのか、相性が良いのかどうか、対応力や知識などを依頼前に知ることができるため良心的なサービスといえます。
司法書士に依頼する場合は、初回の相談料が無料かどうかも依頼前の確認ポイントです。
司法書士に相続登記を依頼する
相続登記を司法書士に依頼する手続き
依頼主が相続登記を司法書士に依頼する際の一般的な手続きは、以下の通りです。
- 司法書士に相談または見積もりを依頼する
- 委任状や業務委託契約書を交わす
- 依頼料を支払う
- 登記完了証の受領
依頼料の支払いタイミングは依頼先によって変わります。
登記完了証は、書面申請の場合は書面で交付され、オンライン申請の場合はダウンロード形式で交付されます。
司法書士の相続登記手続き
相続登記を司法書士が受託した際の一般的な手続きは、以下の通りです。
- 見積りを提示する
- 委任状や業務委託契約書を交わす
- 相続人全員の本人確認や意思確認をおこなう
- 必要書類の収集や作成業務をおこなう
- 登記に必要な登録免許税を立替払いする
- 登記申請する
- 依頼者へ費用請求をする
相続登記に必要な書類
相続登記に必要な基本書類は、以下の通りです。
- 被相続人の戸籍関係書類
- 相続人全員の戸籍関係書類、印鑑証明書等
- 相続証明書(遺産分割協議書や遺言書)
- 固定資産税評価額証明書類
その他、必要な書類については司法書士が適宜取得、用意してくれます。
司法書士への相続登記依頼費用削減ポイント
相続登記に必要な費用を削減するためのポイントは、以下の通りです。司法書士によって設定されている料金が違うといえど、可能な限り費用を抑えたい人が多いのではないでしょうか。
費用削減のポイントについて紹介します。
司法書士への費用交渉
対応してくれるかどうかは未知数ではありますが、費用の交渉をすることもポイントです。
費用の交渉をする場合、経費に関しては値引きしてくれることはありません。
したがって、交渉の余地があるのは司法書士に支払う報酬の部分となります。もちろん司法書士にとっては痛手にはなりますが、報酬であれば値引きしてくれる可能性はあるでしょう。
「費用を安くしてくれるなら契約する」と確約の進言をしたり、予算を伝えたりすることで値引きをしてくれるかもしれません。
または、交渉が苦手な人は複数の司法書士に同じ依頼内容で合い見積もりをとることで、納得した額で司法書士を選択することができます。
必要な手続きの最適化
司法書士に依頼する場合、どこからどこまでの範囲を自分でやるのか司法書士に依頼するのか決める必要があります。
相続登記の手続きで最も費用が高くなるのは登録免許税で、誰が手続きをしても費用を抑えることはできません。
しかしながら、相続登記の申請や遺産分割協議書の作成を自分で行うことによって、費用を安く抑えることはできます。
依頼する司法書士に、どこまで自分でしてもよいのか、したいのかを明示し確認することも費用削減のポイントです。
税金の最適化
相続登記の手続きを行う上で最も高い経費は、登録免許税です。
登録免許税額を削減できれば全体の費用も抑えることができますが、税金を削減することは通常はできません。
しかしながら、相続登記における土地の相続には免税措置があり、適用要件を満たすことで登録免許税を削減することができます。
適用されるかどうか確認することが費用削減のポイントです。
土地の登録免許税の免税措置対象条件は、以下の通りです。
- 土地の相続登記をしていない状態で、相続人が亡くなったとき
- 相続する土地の評価額に持分割合を掛けた不動産の価額が100万円以下のとき
引用:相続登記の登録免許税の免税措置について
以上、どちらかの条件を満たす土地の所有権移転登記または所有権保存登記は、申請書に免税根拠となる法令を記載し登記申請することで登録免許税を課せられることはありません。
ただし、こちらの免税措置は現在、2025年3月31日までの措置とされているため注意が必要です。
その他の注意点としては、固定資産税評価額証明書類に固定資産税が非課税と記載されていても、所有権移転登記の際には登録免許税は課税されます。
固定資産税が非課税と記載されていても、相続登記にかかる費用を準備するために確認が必要です。
まとめ:相続登記を司法書士に依頼する際のポイント
相続登記を司法書士に依頼する場合、どのくらいの費用がかかるのか見積もりを依頼しましょう。
費用が高いと感じる場合は、別の司法書士に見積もりを依頼して比較しましょう。
可能な限り費用を抑えたい場合は、自分でできる業務は自分で行いましょう。
相続人や保有不動産が多い場合は、手続きや調査に時間を要することが考えられます。
自分ですることに不安がある人は司法書士に相談、依頼することをおすすめいたします。
自分で登記申請したいなら建物登記支援センターの「住Myの建物登記自己申請」がお手伝いをいたします。スムーズに登記申請を終えたい方はぜひ、お気軽に御相談ください。