表題登記とは、新しく取得した土地や建物について法務局に届出ることで作成されるもので、土地や建物の戸籍だといえます。
表題登記申請とは、土地や建物でまだ登記されていないものを新規で届出ることで、出生届といえます。
土地家屋調査士に頼らず自分で登記することもできますが、しっかりと準備を行い、手順を踏んで進めていかないと失敗してしまうリスクも少なくありません。今回は、自分で表題登記をする際の方法や、よくある失敗パターンについて解説します。
建物表題登記を自分で申請するには
表題登記は、土地と建物の二種類ありますが、今回は新築した際に必ずやらなくてはならない建物の表題登記について解説します。
建物表題登記は、自分で申請することも可能です。
家を買った時に、土地家屋調査士が表題登記申請の委任行為をすることが慣例となっています。家を買った人は自分が出来ることを知らず、土地家屋調査士を選ぶことなく、また金額を比較することなく、販売事業者や建築事業者に請求される価格で支払いをしています。
つまり、家を買った人が「自らの意思で依頼はしていない」ことになります。
仮に土地家屋調査士に依頼するとかかる費用は、家の大きさや地域、士業者により異なりますが11万円~15万円程度です。ここでは、自分で申請をするのに必要な書類と手続きの流れを見ていきます。
申請に必要な書類のとりまとめ
表題登記を自分で行うには、家の所有権を取得した日から1カ月以内に必要書類を揃え、法務局に申請しなくてはなりません。
基本となる必要書類とは、「登記申請書」「建物面図・各階平面図」「建築確認書(建築確認通知書)」「検査済証」「引渡証明書」「引渡証明書記載の建築事業者の印鑑証明書」「申請者記載の住民票」の7種類です。
(※共有申請の場合は、共有持分証明書や印鑑証明書が必要になります)。
それぞれの書類について解説します。
登記申請書
所有者が新築した建物の「種類」「構造」「建築年月」「所有者(共有名義人も含め)」「所在地」「延床面積・専有面積」などを法務局へ申告する書類です。
決まったフォーマットはありませんが、必ず記載する項目は、上述した項目以外に、登記の目的(建物表題登記と記載)、提出する法務局の名称、申請人、第三者に委任する場合は代理人などです。法務局など、Webサイトからフォーマットをダウンロードできるので、参考にするとよいでしょう。
(※法務局が上部と右側に印を押したりするための空白が必要なので、決まったフォーマットが用意されている場合もあります)
また、登記申請書には、ほかに添付する書類名もすべて記載しなくてはなりません。そして、添付する書類は基本的にすべて原本で、コピーは不可です。ただし、各階平面図/建物図面以外に関しては、原本の還付請求を行えます。
(※共有持分証明書及び不随する印鑑証明書も返還不可書類です)
還付請求を行う場合、還付を求める書類のコピーを作成し、コピー毎に「原本に相違ありません」と記載し、申請書に押印した者がコピーにも署名、押印した上で申請書に添付し、原本と一緒に提出します。または、原本還付請求の表紙をつけて、ホチキス留めしてまとめます。その際には、各ページ見開きに割印が必要になります。
各階平面図/建物図面(B4)
各階平面図、建物図面はB4用紙1枚に記入し、法務局に提出します。
見本があればというところですが、家は個々によって異なるため、法務局で図面見本を貰えるといったことはありません。現状、インターネットでも同様です。
図面は、手書きのほか、パソコンで設計ソフトを使って作成しても問題ありません。
建築確認済証(確認済証や建築確認通知書ともいいます)
建築確認済証とは、建物を建築する際に、自治体もしくは民間の指定確認検査機関に提出した建物確認申請書に記載された事項が、建築基準法に適合すると認めた書類です。
建築確認済証は、市町村長もしくは都道府県知事から建築主に通知され、通知をもって建築工事を開始します。建築確認済証は工事が完了すると基本的に修正、再発行はできません。
表題登記を申請する場合、建築確認済証の原本が必要となるため、失くさないように注意してください。
ちなみに、建築確認済証は平成11年(1999年)に施行された建築基準法以降の名称で、それ以前は、建築確認通知書と呼ばれていました。現在でも建築確認通知書と呼ぶ場合もありますし、証書の題名が確認済証となっていることもあります。
検査済証
検査済証とは、建物の工事が完了した後、完了検査を受け、合格した場合に発行される書類です。
基本的に工事が完了しても、完了検査を受け、検査済証が発行されないと、その建物に住むことはできません。検査済証も建築確認済証同様、原本を提出する必要があります。
なお、申請するときに所有権証明書を添付すれば、検査済証の提出は不要になります。ただし、水回りの設置や敷地内に部材等がなく、住める状態であることが前提となります。
所有権証明書には、「A譲渡証明書兼未使用証明書」「B引渡証明書」の2点があります。これは、建売(A+B)と注文住宅(B)で申請時に提出する書類が異なります。
引渡証明書
引渡証明書とは、正確には工事完了引渡証明書といい、工事が完了した時点で、工事人もしくは工事会社が施主(建物を建てる人)に建物を引き渡したことを証明する書類です。通常、工事を行った者、もしくは工事会社から受領します。
「引渡証明書記載の建築事業者の印鑑証明書」
工事完了引渡証明書には工事人の実印が必要ですが、それに伴い表題登記を申請する際は、工事人の印鑑証明書も添付しなければなりません。また、法人の場合であれば、資格証明書(会社の登記事項証明書や代表者事項証明書)も必要です。
申請者記載の住民票
表題登記を申請する申請者の住民票は、新築した建物の所有者が誰で、どこに住んでいるかを証明するために提出することが求められます。
住民票の発行日については規定がありません。内容が、現在と何一つ変更点がなければ10年以上前でも利用できます。
法務局へ申請手続き
必要書類を揃えたら、法務局で申請手続きを行います。時間が合わず直接行けない場合は、郵送でも構いませんし、インターネットを使ったオンライン申請もできます。
提出した書類に不備があった場合は、補正依頼の電話がかかってきますので対応し、改めて提出をします。
なお、必要書類を用意する前に法務局窓口に行き、表題登記の申請を自分でやる旨を説明すれば、申請方法について教えてくれるので、事前に予約のうえ相談されるのがおすすめです。
また法務局では、建物を建てた土地の謄本、公図(地図)、地積測量図などを取得できます(有料)。建物図面・各階平面図を作成するのに役立つので事前に取得しておきましょう。
現地立ち会い
書類提出後、連絡が入り、日時を調整して現地での立ち会い確認を行います。外観だけをチェックする場合もあれば、家の中までチェックする場合もありますが、特に問題がなければ、数分から数十分で終わります。
立ち会い確認が完了すれば、その後数日で登記手続き完了となり、登記完了証を受け取れます。法務局で直接受領できますが、郵送でも送ってもらえます。
自分で建物表題登記を申請して失敗する3つのパターン
自分で建物表題登記の申請を行えば、大幅なコスト削減ができます。しかし、スムーズに進むケースばかりではなく、場合によってはコスト以上の手間がかかってしまう場合もあります。
特に「住宅ローンの実行とのスケジュール調整」と「図面作成」に関しては、事前にしっかりと確認、調査をしないと申請が失敗に終わる可能性があります。具体的に失敗のパターンを解説します。
住宅ローンの実行とのスケジュール調整
住宅ローンを利用して建物を建てる際は、住宅ローンの実行と表題登記申請のスケジュール調整に十分に注意しましょう。
通常、住宅ローンを利用する場合、抵当権設定という登記が必要になります。ここで、大きな問題となるのは、抵当権設定は保存登記の後または連件申請で設定をつけますが、表題登記が完了していなければできない点と、事業者から受領する工事完了引渡証明書(+譲渡証明書兼未入居証明書)は、事業者によっては工事代金の支払いを済ませないと渡さない場合がある点です。
土地家屋調査士に登記申請を依頼した場合は、支払い前でも工事完了引渡証明書(+譲渡証明書兼未入居証明書)を受け取れるケースがほとんどですが、個人の場合は受け取れないケースもあります。
しかも表題登記は、土地家屋調査士に申請を依頼した場合と、個人で申請した場合では、個人で申請したときのほうが、実地調査が入る分、完了までに時間がかかります。そのため、個人で登記申請を行う際は、ギリギリのスケジュール調整が必要になります。
ただ、所有権証明書をもらうことができれば、完了検査を待たずに申請できるので、ギリギリにはなりません。
施工会社によっては、個人で登記申請する場合でも事前に工事完了引渡証明書(+譲渡証明書兼未入居証明書)をもらえることもありますので、必ず事前に確認をしておきましょう。
図面作成ができない
自分で表題登記を行う際、最も手間がかかるのが図面作成です。事前に法務局へ行きアドバイスをもらうことも可能ですが、手間がかかるのは変わりません。手書きで作成する場合の流れを見てみましょう。
□B4サイズの用紙を用意します。法務局によっては専用の用紙をもらえる場合もありますが、普通紙を使って作成しても問題はありません。
□B4用紙に枠線を書き、作成者の名前、申請人の名前と捺印、建物の住所を記載します。用紙の左側が各階平面図、右側が建物図面です。用紙サイズはB4限定です。
□各階平面図を基本1/250の縮尺で、建物確認申請書に記載されたものを基に記載します。2階以上ある場合はそれぞれ別に記載し、下の階と異なる部分は点線にします。
なお各階平面図は、「不動産登記規則第八十三条二項」に基づき、「各階平面図は、二百五十分の一の縮尺により作成しなければならない。ただし、建物の状況その他の事情により当該縮尺によることが適当でないときは、この限りでない。』とあり、1/250で限定していません。
□建物図面の縮尺は基本1/500で、敷地と隣接する土地の地番、建物一階の形状、敷地から建物までの距離を必ず2カ所以上記載します。また、方位も併せて記載しなくてはなりません。
建物図面も、「不動産登記規則第八十二条三項」に基づき、「建物図面は、五百分の一の縮尺により作成しなければならない。ただし、建物の状況その他の事情により当該縮尺によることが適当でないときは、この限りでない。」とあるため、変更することも可能です。
□各階平面図は、階ごとに面積を求める計算式を記載し、床面積がすぐにわかるようにしなくてはなりません。
簡単に流れを見るだけでも、これだけの作業が発生します。しかも建物の外形が直線ではなく、丸みを帯びていたり、複雑な形であったりすれば、床面積の計算式もより複雑となります。
法務局でアドバイスがもらえるとはいえ、図面作成の段階で何度も補正依頼を受けてしまい、自分での申請を断念するケースも少なくありません。
注意が必要な建物表題登記における図面作成
図面作成に手間がかかるのは、詳細な図面が必要だからというだけではありません。建物表題登記における図面作成には多くのルールがあり、一つでもルールに反してしまうと補正を受けてしまう可能性があります。ここでは、その中でも主なものをいくつか見てみましょう。
- 0.2mm以下の細線で記載する
0.2mm以下の細線で明確に記載しなくてはなりません。これはパソコンを使った場合でも同様です。
- 必須記載事項
建物図面、各階平面図のほか、「作成日・作成者・申請人(捺印)・建物の所在(住所)・方位・家屋番号・縮尺」は必須です。
また、作成者の住所は、表題登記申請で提出する住民票の住所と同じにする必要があります。仮に住民票の住所と現在の住所が異なる場合でも、住民票の住所に合わせます。どれか一つでも抜けてしまうと補正依頼が入るので注意しましょう。
- 記載単位
建物図面、各階平面図ともに寸法を記載する場合の単位はメートル(m)です。建物図面の右下部分に、(単位:m)と明確に記載します。
- 建物図面は現地調査が必須
建物図面は、建物の形以外に、敷地内のどの位置に建物が建っているかも正確に記載しなければなりません。法務局でもらえる公図(地図)だけでは正確に記載できない場合があるため、現地に赴き、実際に敷地の境界線から建物の外壁までを計測します。
建物図面で記載する寸法はメートル単位です。ただし、小数点第2位まで記載するため、距離はセンチメートルまで、最低3カ所計測します。
建物図面で建物の形状以外に記載するのは、敷地の境界線、地番、隣地の地番、敷地の境界線から建物までの距離(3カ所)です。また、建物が二棟以上ある場合は、主たる建物と附属する建物を分け、それぞれに「主」「附」を記号として記載します。
(※敷地境界線と建物との距離を「あき」とよび、あき寸法は2カ所以上の記載が必要です)
- 床面積の考え方
表題登記で提出する各階平面図の床面積は、不動産登記法で定められた定義「天井までの高さ1.5mで三方向を壁やガラスで囲まれている」が基です。
この定義で考えると、例えば駐車スペースでも、三方向が壁もしくはガラスで囲まれていて、高さが1.5m以上あれば、基本的には床面積に含まれます。
ベランダも天井がなければ床面積には含まれませんが、天井があるタイプで三方向が囲まれていれば、床面積に含めなければなりません。
ロフトも基本的に三方向は囲まれています。しかし、天井までの高さが1.5mなければ床面積には含めません。
そもそもロフトで天井までの高さが1.5m以上あると2階建ての家であれば、3階建てになってしまうため違法建築になってしまう可能性もあります。基本的にロフトは違法建築を避けるためにも、天井までの高さが1.5m以内になっているので、床面積として計算する必要はありません。
次に出窓ですが、出窓下部が床面と同じ高さで、天井まで1.5mある場合は登記面積として含まれます。ただしほとんどの出窓は、床面から少し高さをとってあり、壁面からいわば飛び出ているような状態ですので、床面には接地していません。出窓の高さから天井までが1.5m以上なければ、床面積には含めず計算します。
また、吹き抜けは床がないため、床面積に含めるのは1階部分のみです。
では、階段が吹き抜けになっている場合はどうなるでしょう? もし階段が吹き抜けでなければ、床面積に含まれます。しかし、吹き抜けになっていると床面積には含まれません。ただし、階段の一部分のみが吹き抜けの場合、登記所によって判断が異なるので事前に確認することをおすすめします。
(※階段の一方が格子であった場合は、法務局によって判断が異なることもあります)
建物表題登記を自分でできないケース
建物表題登記を自分でさせてもらえないケースも存在します。それは、つなぎ融資のために先行登記が必要な場合です。
表題登記をする権利は、所有者が基本であることが法で定められています。ここで、「させてもらえない」と表現したのは、自分でできないのではなく、「本人申請をさせてもらえない」という方が適しているからです。
建物を新築する場合、施工会社にもよりますが、工事を始める前に着手金、工事途中で中間金を求められる場合があります。
しかし、住宅ローンは建物が完成し、工事完了引渡証明書を受領しなければ、利用できません。そのため、住宅ローンを利用できるまでの間、必要な資金を一時的に立て替えてくれるのがつなぎ融資です。
つなぎ融資を受ける際、担保を確保するために建物の所有権移転登記を建物が完成する前に行う場合があります。これを先行登記と呼びますが、先行登記を行う場合、銀行によっては、建物図面の作成を指定の土地家屋調査士に依頼するため、自分では建物表題登記申請をさせてもらえません。
また、着工金や中間金は支払えても、建物が完成して引き渡し時に書類が間に合わず、ローン実行が遅れてしまう場合があります。その際につなぎ融資を使う場合も、銀行側は少しでも早く手続きを進めるため、指定の土地家屋調査士に依頼し、建物表題登記を行います。
つまり、つなぎ融資を利用する場合、銀行側の都合もあり、先行登記が必要になるため、自分で建物表題登記ができなくなってしまうのです。
まとめ
建物を建てた際にはさまざまな手続きが発生します。建物表題登記もその一つで、完成した建物が「自分のものであることを証明するため」の重要な登記です。所有権を取得してから1カ月以内に登記をしないと罰則もあるため、忘れずに申請をしなければなりません。
建物表題登記は土地家屋調査士に依頼することが一般化していますが、自分で申請することが基本なのです。ただし、建物図面・各階平面図の作成は、現地調査が必要であることに加え、法律の理解も求められるため、経験がないとすぐに受理されるのは難しいでしょう。
そこでおすすめしたいのが、「住Myの建物登記自己申請」です。知識がない状態では難しい、図面作成やさまざまな手続きを専門家に依頼しなくてもスムーズに進められるよう、困難だと感じる図面の作成や登記書類の準備や自己申請マニュアルなど最大限の支援を行っています。
基本的には、工事の中間検査で中間検査合格証を取得した時点でご依頼いただければ、建物登記申請に必要な図面や書類を準備してもらえますので、あとは、施工会社から受取る書類とあなたの住民票が揃えば、建物が完成したその日に申請を行うことが可能です。「できるだけコストを抑えたいけれど、自分一人で申請準備するのは不安」といった際は、ご相談ください。
- Q建物表題登記を自分で申請したときの費用はいくらかかりますか?
- A
登記情報取得に1000円前後、B4の用紙が1枚、建築確認書をコピーして作成する原本還付請求にA4とA3の用紙で20枚程度の費用で済みます。あわせて行うことが多い所有権保存登記は、登録免許税という国税を納める必要があります。
- Q建物表題登記申請で自分で図面を作成することはできますか?
- A
線の細さや隣地、敷地記載など登記法に則っていれば手書き、パワーポイントやエクセルやCADアプリを使ってパソコンで作成することも認められています。