本来、建物を建てた際には、1カ月以内に法務局へ「表題登記」を行うことが法律で義務づけられています。この表題登記をしていない建物が、未登記建物です。表題登記は、住宅ローンの契約をする際に必要となるため、最近の建物の多くは登記されていますが、古い建物の場合、未登記のものも少なくありません。
その後、リフォームでローン契約をする際に未登記であることが発覚し、契約ができないといったケースが増えています。今回は、未登記建物がリフォームローン申請で却下されてしまう理由についてお伝えします。
リフォームで未登記建物であることが発覚
自身の住む家が登記されているか、未登記のままか。これを知らないことは「ありえないのでは」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、家主であっても実際に登記済か未登記かを知らない可能性は十分にありえます。その理由は次のとおりです。
住宅ローンを使わずに建物を購入した場合
住宅ローンの申請を行うには、登記簿謄本の提出が必須です。そのため、建物を建てた際には必ず表題登記をする必要があります。
しかし、現金で一括購入する場合に関しては、登記簿謄本の提出を求められることがないため、表題登記をしなくても困ることはありません。
表題登記は法律で義務付けられていて、登記をしない場合の罰則も定められています。しかし、実際に登記をせずに罰則を受けたというケースはほとんどありません。
そのため、家主が法律に詳しくない場合、登記が必要であること自体を知らずに、そのまま過ごしてしまう可能性があります。
また、中古住宅を購入する場合も、住宅ローンを使わずに現金で購入すれば、その建物が未登記であっても気づかないケースはあるでしょう。
相続で建物を譲り受けた場合
未登記の建物を相続した場合も、登記か未登記か気づかないケースの一つです。本来、建物を相続した場合、被相続人から相続人への名義変更が必要になるため、相続登記をしなければなりません。
相続登記をすれば、手続きの段階で未登記だと発覚します。しかし、名義人変更をせずに被相続人名義のままで住む、もしくは空き家状態にするケースも多いようです。
売却となれば、登記されているかどうかの確認をするかもしれませんが、売却しなければ名義人も被相続人のままといった方は実はかなりいらっしゃいます。この場合も、相続人に法律の知識がなければ、登記されているか未登記かはわかりません。
では、自身が住んでいる建物が未登記建物であることに気づくのはどういったタイミングなのでしょう。いくつか考えられますが、なかでも多いのは、リフォームでローン申請が必要になったときです。
家を建てたときは、現金で一括購入したものの、リフォームはローンを使うといった際に、登記簿謄本の提出を求められて気づくケースが多いようです。また、相続した時点では登記はせずにリフォームの段階で、未登記に気づくケースも少なくありません。
未登記建物がリフォームローン申請却下になる理由
建物の表題登記は、法律で義務づけられているものの、登記をしなくても罰則を受ける可能性が低ければ、そのままでもよいと思われるのではないでしょうか。
しかし、建物を登記せずに未登記のままでいるメリットは登記の手間とコストがかからないぐらいです。それ以外はデメリットしかありません。特にリフォーム時にローン申請が却下されてしまうのは大きなデメリットといえるでしょう。
では、なぜ、未登記建物ではリフォームローンの申請が却下されてしまうのでしょう。その理由は、大きく2つありますが具体的には次のとおりです。
建物表題登記と保存登記
建物のリフォームでローンを申請する際、通常は建物を担保として融資を受けます。これは、建物を建てた際に利用する住宅ローンも同様ですが、建物を担保にするために必要なのが表題登記と保存登記です。
ここで、表題登記と保存登記について簡単に説明します。
表題登記とは?
建物の所在・地番・家屋番号・種類・構造・床面積・所有者の住所、氏名を法務局へ登録するための手続きです。
保存登記とは?
建物の所有権を誰が有しているかを証明するための手続きです。誰がいつどのように所有権を取得したかを記載します。
なお、これまでも説明してきたように、表題登記は法律で義務づけられていますが、保存登記は義務ではなく罰則もありません。ただし、保存登記をしていないと売却や相続を行う際の所有権の転移が難しくなります。
リフォームローンとの関係
リフォームでローン申請を行うには、登記簿謄本の提出が求められると説明しました。登記簿謄本には、表題部、権利部(甲区・乙区)の区分があり、表題部は表題登記で行った建物の物理的状況を記載する部分です。そして、権利部の甲区は、建物の所有権に関する権利関係を記載する部分で、乙区は、担保権などの権利関係を記載する部分になります。
表題登記しかしていなくても、登記簿謄本の作成は可能です。しかし、リフォームローンの申請をするには、建物の所有権を明確にする必要があります。そのため、保存登記をしないと、権利部の甲区が空欄で所有権を持つ者がいないとなるため、申請は認められません。
ちなみに、保存登記だけを行い、表題登記は行わないと登記簿謄本の作成はできませんので、リフォームローンを申請する場合は両方の登記が必須です。
また、表題登記と保存登記は、どちらも自分で行えます。ただし、委任する場合の相手は、表題登記は土地家屋調査士、保存登記は司法書士と同じではありませんので注意が必要です。
抵当権が設定できない
表題登記、保存登記を行い、登記簿謄本を作成すればリフォームローンの申請が通るかといえばそうではありません。リフォームローンの申請に通るには抵当権の設定が必要です。
抵当権とは、金融機関がリフォームローンを行う際、リフォームを行う建物をローンの抵当にする権利を指します。つまり、融資を受けた者が支払い不能になった場合に、担保である建物を自由に処分することができる権利です。
抵当権の設定は、抵当権の設定登記という形で行われます。設定後は、前述した登記簿謄本、権利部の乙区に抵当を設定した日時、債権額、抵当権者の名称が記載されます。このことから、リフォームローンの申請に通るには、抵当権の設定が必要であり、そのためには、表題登記と保存登記が必須であることがわかります。
逆にいえば、表題登記と保存登記を行わなければ登記簿謄本を提出できず、抵当権の設定もできない。つまり、リフォームローンの申請も却下されてしまうということです。
増築建物の改修にも注意
表題登記も保存登記も行っていて、リフォームローンの申請が通ったとしても注意する点があります。実は、リフォームのなかでも増築した場合、表題登記の変更をしないと、次にリフォームを行う際にローン申請が却下されてしまう可能性があるのです。
表題登記では、建物の所在地だけではなく、構造や床面積も申告する必要があります。リフォームで増築を行えば、当然、構造や床面積も変わるため、変更の登記をしなくてはなりません。
増築は、平屋を2階建てにした、子供部屋を一部屋増やす以外にも車庫や倉庫、物置を設置した際も登記変更が必要です。
また、増築だけではなく減築の場合も当然、登記変更をしなくてはなりません。子供が結婚して独立したので子供部屋を取り壊した、車を売ったので車庫を壊したといった場合も、登記変更を行います。
表題登記の変更は自動ではないため、必ず所有者自らが手続きをしなければなりません。これを怠り、数年後にまたリフォームの必要性に迫られた場合、実際の建物と登記上の建物面積、構造が異なるため、ローン申請は却下されてしまいます。
これは、建物を相続した場合も同様です。被相続人が表題登記・保存登記を済ませたものの、リフォーム時に変更登記をしていないと、相続人がリフォームをする際のローン申請は却下されてしまうでしょう。
自身が建てた建物を自身でリフォームする際は、変更登記をするのも自身のため、気をつけていれば忘れることもありません。注意が必要なのは、相続した場合です。つい、未登記ではないかだけを確認し、登記してあれば問題ないと思いがちです。
しかし、リフォームをしていたかどうか、その際には変更登記をしていたかどうかも必ず確認し、変更登記がされていなければ、将来のためにも必ず自身で変更手続きをしておきましょう。
まとめ
建物を建てた際に、表題登記をしていない建物を未登記建物といいます。通常、建物を建ててから1カ月以内の登記が法律でも義務づけられていますが、基本的に催促されるわけではないため、そのまま放置するケースは少なくありません。
特に住宅ローンを使わずに購入する場合は、登記簿謄本の提出を求められることもないため、手間のかかる登記はしない方も多いようです。
しかし、数年後にリフォームが必要になり、その際にローンを組む場合、登記をしていないとローン申請は却下されてしまいます。建物を建ててから10年以上も過ぎると、登記をしていないことも忘れてしまい、リフォーム時に発覚し、登記をしようにも手続きに必要な書類を集めることは簡単ではありません。
もちろん、法律で義務とされているため登記は必ずすべきですが、将来のリフォーム時に困ったことにならないためにも必ず登記は行いましょう。
登記をしないままで、古くなってしまった建物の登記を自身で行うのは非常に手間がかかります。建物登記支援センターの「住My(すまい)の建物登記自己申請」をご利用いただければ、建物の登記を自分で行うにあたって必要なサポートをいたします。