新築建物を取得し、所有権を他の人が主張できないようにするためには「所有権保存登記」という登記が必要です。所有権保存登記には、登録免許税という国税が課せられます。
すでに登記済の不動産を相続により取得した場合は、所有権保存登記ではなく、所有権移転登記が必要になり、この登記にも登録免許税が課せられます。
登録免許税について、計算方法や登録免許税が安くなる軽減措置についてお話ししましょう。
所有権保存登記の登録免許税とは
不動産(家や土地)を取得した際、「この家は私のものです」、「この土地は私のものです」と第三者に対し所有権を主張できるようにする。つまり、所有権を法的にはっきりするためには、その家や土地についての登記が必要です。「権利に関する登記」の際にかかる税金が登録免許税です。
不動産の登記が必要になるケースをいくつか見てみましょう。いずれも登録免許税がかかります。
土地を購入した(土地)
土地は川などを埋め立てして「土地」として活用される状況でない限り、誰かの持ち物です。そのため、土地を購入した場合は、土地の所有権者が売主から買主に変わったことを明確にする「所有権移転登記」が必要になります。
土地を相続した(土地)
例えば、親の土地を相続したという場合、その土地の名義を親から相続した人に変更しなければなりません。いわゆる相続登記です。ただ名称は相続登記ですが、登記の内容は「所有権移転登記」と同じです。
家を新築した(建物)
新築の家は言うまでもなくまだ登記されていません。そこで新築の家については、表題登記を最初におこない、所有権移転登記ではなく「所有権保存登記」をすることになります。新築の分譲住宅を購入した場合も、同様の登記が必要です。
家を相続した(建物)
例えば、親の名義で登記されている家(建物)を相続する場合、家の名義を親から相続した人に変更しなければなりません。これも相続登記と呼ばれていますが、登記の内容は「所有権移転登記」です。
未登記の家を相続した(建物)
「親の家を相続したら、登記されていないことが判明した」というケースは少なくありません。不動産登記法では、家の所有権を取得してから一月以内に表題登記することが義務とされており、それを怠った場合は10万円以下の過料に処すると定められています。
期限内に登記されていない建物を「未登記建物」といいます。しかしながら、登記の手続きは新築登記と同じで、まず表題登記を行い、その後に所有権保存登記をします。(表題登記とは、家の所在地や構造、床面積など「建物の物理的な状況の登記」で、所有者を公にするだけで、所有権を確定させる登記ではありません)
なお、表題登記には登録免許税はかかりません。
マイホームの新築や購入には、ほとんどの方が住宅ローンを利用されると思います。住宅ローンを利用する場合の登録免許税を見ておきましょう。
住宅ローンを利用した場合
住宅ローンを利用する際に、金融機関はローンの対象となる土地や家に抵当権の設定を求めます。
抵当権とは、お金を貸す側である金融機関が、ローンの対象となる土地や家を担保にする権利です。ローンが返済されなくなったら金融機関はその土地や家を差し押さえ、競売にかけることができます。
抵当権を設定する登記が「抵当権設定登記」です。金融機関が「抵当権者」、お金を借りる側が「抵当権設定者」になります。そして、抵当権設定登記にも登録免許税がかかります。
所有権保存登記の登録免許税は誰が支払う?
不動産登記で登録免許税がかかるケースをいくつか見てきましたが、登録免許税は誰が支払うのでしょう。
家を新築した際の所有権保存登記の場合、申請は表題部に明記されている所有者ができます。そのため、登記の際に登録免許税を支払うのも所有者になります。これはわかりやすいと思いますが、所有権移転登記の場合はどうでしょう。
登録免許税法には、「当該登記等を受ける者が二人以上あるときは、これらの者は、連帯して登録免許税を納付する義務を負う」とあります。例えば、Aさんの土地をBさんが購入し所有権移転登記をする場合、「登記等を受ける者」は売主のAさんと買主のBさんです。するとAさんとBさんが「連帯して登録免許税を納付する義務を負う」ことになります。
しかし、実際には不動産の売買契約書に「登記手続きに要する費用は買主の負担とする」というような条文が入ることが一般的で、所有権移転登記の登録免許税を支払うのは買主になります。これは商慣習とも言えますが、所有権移転登記をすることで買主は第三者に対して所有権を主張できるという利益を得ることができます。
売主は登記簿上の権利を喪失するという不利益(形式上の不利益です)を受けるという点も考慮されているようです。
住宅ローンにおける抵当権設定登記については、金融機関の求めに応じて抵当権設定登記をする人、つまり、住宅ローンを利用する人が抵当権設定登記を行い、登録免許税を支払うことになります。
相続による所有権移転登記、所有権保存登記の登録免許税は、相続した人が支払うことになります。
登録免許税の計算方法
登録免許税の計算方法を見ていきましょう。登録免許税の計算式は次のようになります。
不動産の価額(課税標準)×税率=登録免許税
不動産の価額は、市区町村村役場で管理している固定資産課税台帳に価格がある場合は、その価格です。固定資産課税台帳に価格がない場合は、法務官が認定した価格になります。
(法務局の説明では、登録免許税の計算式を「課税標準×税率」としていますが、「課税標準」は固定資産課税台帳の価格=不動産価額です)
では早速、具体的な数字をあげて、登録免許税の計算方法を見ていきましょう。
土地の所有権移転登記(売買による移転)
売買による土地の所有権移転登記の場合、登録免許税の本則税率は2%です。
計算では、まず、1,000円未満の端数を切り捨てます。仮に固定資産税評価額を12,345,670円とすれば、1,000円未満の端数を切り捨て12,345,000円とし、本則税率2%をかけます。その結果登録免許税は、
12,345,000円×2%=24万6,900円になります。
また、登録免許税に100円未満の端数が出たときには、その端数を切り捨てます。登録免許税が6万1,230円と出た場合、30円を切り捨て6万1,200円とします。
土地の所有権移転登記(相続による移転)
相続による土地の所有権移転登記の場合、登録免許税の本則税率は0.4%です。
仮に固定資産税評価額を2,000万円とすれば、登録免許税は、
2,000万円×0.4% = 8万円になります。
建物の所有権保存登記(新築建物による保存)
家を新築した際は所有権保存登記を行います。登録免許税の本則税率は0.4%です。
新築建物の場合、まだ固定資産課税台帳の価格がないため、各都道府県の法務官と税務署が『新築建物課税標準価格』を決め、それを基準として税率をかけます。その標準価格を2,000万円とすれば、登録免許税は、
2,000万円×0.4%=8万円になります。
建物の所有権移転登記(相続による移転)
相続による建物の所有権移転登記の場合、登録免許税の本則税率は0.4%です。
仮に建物の固定資産税評価額を1,000万円とすれば、登録免許税は、
1,000万円×0.4%=4万円です。
建物の所有権保存登記(相続による保存)
相続した建物が未登記である場合は、先にお話ししたとおり、まず建物の表題登記をし、その上で建物の所有権保存登記をします。
その際の登録免許税の税率は、新築建物と同じく本則税率は0.4%です。仮に建物の固定資産税評価額を1,000万円とすれば、登録免許税は、
1,000万円×0.4%=4万円です。
当権における登録免許税(住宅ローン設定時)
住宅ローンにおける抵当権設定登記にかかる登録免許税の計算式は次のとおりです。
債権額(借入金)×税率=登録免許税
本則税率は0.4%です。3,000万円のローンを組んだという場合、登録免許税は、
3,000万円×0.4%=12万円になります。
登録免許税の軽減措置
登録免許税には、要件を満たし、自分で手続きすることで適用される「期限が定められた」租税特別措置法などの軽減措置があります。一般住宅についての登録免許税の軽減措置について見てみましょう。
新築の家の所有権保存登記
登録免許税が本則税率0.4%→特例税率0.15%に軽減されます。
・住宅ローンを利用する際の抵当権設定登記
登録免許税が本則税率0.4%→特例税率 0.1%に軽減されます。
なお、土地付きの中古住宅を購入したという場合も、土地と家の所有権移転登記が必要ですが、その際の登録免許税は土地も建物も同じく本則税率2%です。ただ建物については、所有権移転登記の登録免許税が本則税率2%→特例税率0.3%になる軽減措置があります。
軽減措置を受けるには、登記申請の際、「住宅用家屋証明書」を添付します。住宅用家屋証明書とは、簡単にいえば「私が住むための家で、広さも普通にありますし、登記もきちんとしています」ということを証明してもらう書類です。
住宅用家屋証明書は申請建物管轄の市区町村役場に申請し、要件を満たせば取得できます。一定の条件はありますが、一般的な住宅であれば心配はないでしょう。主な条件は次のようになります。
- 自宅として利用すること
- 床面積が50㎡以上のもの
- 住宅の新築または取得後1年以内に建物表題登記していること
- 中古住宅の場合は、個人が取得した、自己が居住するための、床面積50平米以上の、一定の耐火、耐震基準に適合している住宅であること等
とされています。
登録免許税の支払い方法
登録免許税は原則として現金納付です。主な納付方法は、金融機関振込または収入印紙による納付になります。登記所では現金を納めることができません。
金融機関振込を選択する場合、領収通知書(納付書)を置いている金融機関は少ないため、事前に確認をするか、税務署で入手します。納付書に必要事項を記入する際に「納付する税務署」がどこになるのかということに留意が必要です。
国税のため、原則どの税務署で納付しても良いのですが、法務局によっては、納付する税務署を指定する場合もありますので事前確認をした方が確実です。
次に、金融機関窓口に納付書を提出し、登録免許税額を支払います。その時に受取る領収証書を、A4用紙に貼り付け登記申請書に添付します。登録免許税額が30,000円以下の場合、登録免許税額の収入印紙を、法務局や郵便局などで購入し、申請書に貼付して納付することも認められています。
まとめ
不動産の所有権を明確にするためには所有権保存登記が必要になり、その登記にかかる税金が登録免許税です。
ここでは所有権保存登記、所有権移転登記、抵当権設定登記の登録免許税についてお話ししました。登録免許税には、要件を満たせば税率が下がる軽減措置もあります。大切な家や土地の自己の権利を守るため所有権保存登記まできちんと行いましょう。
今回お話しした登録免許税と軽減措置について表にまとめておきます。
登記の種類 | 税 率 | 軽減措置 |
---|---|---|
1土地の所有権移転登記(売買による場合) | 2.0% | 0.15%*1 |
2土地の所有権移転登記(相続による場合) | 0.4% | 免税*2 |
3住宅用家屋の所有権保存登記(新築住宅の場合) | 0.4% | 0.15%*3 |
4住宅用家屋の所有権移転登記(相続による場合) | 0.4% | - |
5住宅用家屋の所有権保存登記(相続による場合) | 0.4% | - |
※住宅用家屋の所有権移転登記(中古住宅の売買による場合) | 2.0% | 0.3%*4 |
6抵当権設定登記(住宅家屋証明書取得の場合) | 0.4% | 0.1%*5 |
*2 平成30年4月1日から令和7年3月31日まで
*3-5 令和4年3月31日→令和6年3月31日まで適用期間の延長
一般的に不動産の登記は専門家に依頼するものと思われていますが、実は専門家に依頼せず自分で登記申請する方も少なくありません。
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