所有権保存登記の費用と相場は?計算方法やアパート、マンションの場合も解説

所有権保存登記

不動産の所有者が、不動産の所有権を他の人に主張するための登記を所有権保存登記といいます。不動産の売買や融資の際にも欠かせないため、建物を新築した際には、登記義務である表題登記を一月以内におこない、義務ではありませんが所有権保存登記を行うことが重要です。

なお、所有権保存登記には一定の費用がかかります。費用は地域や物件の種類、登記内容によって変動するため予め費用や計算方法を知っておかなくてはなりません。

そこで本記事では、所有権保存登記の費用相場や計算方法、アパートやマンションの場合についても詳しく解説します。不動産取引に必要な知識を身につけて、スムーズな取引を行いましょう。


所有権保存登記とは

所有権保存登記とは、ある不動産の権利部を作成するために初めて行う所有権に関する登記のことで、不動産の所有権者を公にし、他の人が所有権を主張できないようにするためには必要な登記になります

所有権保存登記は不動産登記法に基づいて行われ、主に平成17年3月6日までの申請分までは、登記済証(権利書)が発行されていました。不動産登記法が改正され、原則として登記済証は廃止され、それ以降の申請には「登記識別情報通知」が発行されています。

登記識別情報通知は、12桁の暗号が記された書面であり、登記をした人にのみ通知されます。

義務である建物表題登記は、建物の現況と「所有者」を公にするだけで、「所有権」があることの法的な証明にはなりません。他人に所有権を主張されることを防止するだけではなく、住宅ローンを受けるために必要な不動産の担保には、所有権者を法的に確定させる所有権保存登記が必要です。

建物の場合

自身が住む注文住宅もしくは建売住宅を購入した際にも所有権保存登記が必要です。それ以外にもアパートやマンションを建てた際にも所有権保存登記が必要です。

つまり所有権保存登記は、自身が住む建物だけではなく、自身が住まないアパートやマンション経営を行う上でも、その建物が自分の所有物であることを法的に確定させるために必要な登記であることを意味します

土地の場合

一般的に建物を新築する際には、建物を建てる土地も購入される方が多いと思います。建物について所有権保存登記をしても、土地の登記をしなければ土地の所有権を主張できません。

建物の所有権は主張できても土地の所有権を主張できないと、後々、トラブルに発展するリスクも考えられます。

ただ、特筆すべきは、土地は基本的に誰かが所有権を持っている点です。「土地がなかった場所を埋め立てて新たな土地をつくった」といった特殊な場合を除き、家を建てる時点で誰かが所有権を持っていることが一般的です。

そのため、土地に関しては所有権保存登記ではなく、建物を立てる際に、その土地を所有している人から自身へ所有権を移転するための「所有権移転登記」を行います

所有権保存登記と所有権移転登記の違い

土地の登記についてでも説明しましたが、所有権を得るための登記には、所有権保存登記と所有権移転登記の2つがあります。改めてこの2つの登記の違いについて見てみましょう。

所有権保存登記が必要なのは、新築の注文住宅、建売住宅のほか、新築のアパートやマンション、そして相続時に発覚する未登記建物など、「建物」についてです。自身が住むための新築の注文住宅や建売住宅等の建物は、建てた時点では誰も所有権を持っていないことから、所有者が誰であるかを登記する必要があり、表題登記をおこなった後に所有権保存登記を行います。

また、未登記建物の場合も、建物登記については新築建物と同じで表題登記をおこなった後に所有権保存登記を行う必要があります。

これに対し、所有権移転登記とは、すでに誰かが所有権を持っている不動産を購入した際に、所有権を自分に移転させるために行う登記です。具体的には、中古住宅や中古のアパート、マンション、そして土地を購入した際に行います。

つまり中古物件を購入した場合は、建物と土地も含め所有権移転登記だけを行いますが、新築物件の場合は、建物に関しては所有権保存登記を行います。そして、土地に関しては所有権移転登記の両方が必要です。

所有権保存登記の費用と相場

所有権保存登記の方法は、自身で行うか司法書士に依頼するかのどちらかです

自身で登記を行うメリットは、登記にかかる費用を抑えられる点です。所有権保存登記を行うには、費用がかかりますが、自身で行えば司法書士に支払う手数料がなくなる分、安く抑えることが可能です。

これに対し、司法書士に依頼するメリットは、手続きがスムーズに進む点でしょう。特に初めて登記を行う場合や不動産登記に関する知識がない場合、手続きに不備が起こるリスクが高まり、何度も登記所に通う可能性もありえます。

家を新築すると、所有権保存登記以外にも金融機関や施工事務所とのやり取り、引越のための手続きなどやるべきことは少なくありません。そのため、多くの手間をかけてでも自分で登記をするか、手間をコストと考えて司法書士に依頼するかは十分に検討したうえで決めてください。

ここでは、司法書士に依頼することを前提に、登記にかかる費用の内訳や司法書士への手数料相場、計算方法について解説します。

費用内訳

所有権保存登記を司法書士に依頼する場合の費用内訳は、登録免許税に司法書士へ支払う手数料を加えたものです

登録免許税とは、登録免許税法という法律で定められており、不動産においては抵当権設定登記、所有権移転登記などの権利に関する登記の際に課せられる国税です。所有権保存登記の際にも課税されます。

計算方法

所有権保存登記の費用を知るには、登録免許税額の算出が必要で、計算式は次のとおりです。

登録免許税額=課税標準×税率

課税標準となる「不動産の価額は」市町村役場で管理している固定資産課税台帳に価格が示されているかどうかで異なります。

価格が示されている場合は、その価格が課税標準で、毎年市町村役場から通知される固定資産課税明細書に記載されている額です。

なお、通知される固定資産課税明細書において、課税標準を示す項目は「価格」もしくは「評価額」と記載されている項目です。標準と記載されているため、「課税標準額」の項目に記載されている金額のことと思いがちですが、そうではないため注意が必要です

その他、固定資産税課税明細書を紛失していて、固定資産課税台帳の価格を確認できない場合は、市町村役場で証明書を取得できますので固定資産評価証明書を確認すれば価格がわかります。

固定資産課税台帳に価格が示されていない場合、登記官が認定した価格を課税標準とします。建物を建てた地域を管轄する登記所で確認ができます。

次に税率ですが、個人が住宅用家屋を新築または取得し、居住の用に利用する等の場合は、本則税率は0.4%です。

この本則税率を軽減できる期間限定で適用される租税特別措置法があります

税率軽減できる手段の一つに、住宅用家屋証明書があります。これは地域によっても異なりますが、建物が「床面積50平方メートル以上」「マンションなどの区分所有建物の場合は、耐火・準耐火建築物」などの要件を満たした際に交付される書類です。

所有権保存登記に必要な書類ではありませんが、令和6年(2024年)3月31日までであれば本則税率0.4%が特例税率0.15%になります。

住宅用家屋証明書は、管轄市町村役場の税務課で申請し取得することができますが、自身の建物が取得適用条件を満たしているかどうかについては、建物を管轄する地域の登記所に確認されるのが確実です

課税標準と税率がわかったところで、標準課税が4,000万円だとした場合の所有権保存登記にかかる費用の計算式は次のようになります。

4,000万円×0.15%=60,000円

特例税率における費用は60,000円です。
仮に住宅用家屋証明書がなかった場合の計算式は次のようになります。

4,000万円×0.4%=160,000円

本則税率における費用は16万円です。

司法書士へ依頼する際の相場

司法書士に所有権保存登記を依頼する場合の報酬ですが、地域や依頼する人によっても異なります。一般的には3~5万円程度が相場です

ちなみに土地の所有権移転登記の相場は、3~10万円程度でしょう。移転の場合、相続であったり、元の持ち主の調査だったりと保存登記よりも手間がかかる場合もあり、手間がかかるほどかかる経費も報酬も高くなります。

登録免許税額は、住宅用家屋証明書の有無や課税標準額によって価格も変わりますが、司法書士はそれほど大きく報酬額が変わることはありません。ただ、より安く済ませたい場合は、複数の司法書士に相談してみることをおすすめします。

アパートやマンションにおける保存登記費用

個人の住宅だけではなく、アパートやマンションを新築した場合でも所有権保存登記は必要です。規模にもよりますが、個人住宅に比べかなり高額となる場合が多いため、その分、保存登記にかかる費用も高額になります

たとえば、区分所有マンションの課税標準が2億円だとすると、登記にかかる費用は次のとおりです。

2億円×0.15%=300,000円(特例税率)

さらに住宅用家屋証明書がなければ、

2億円×0.4%=800,000円(本則税率)

登記だけで80万円がかかります。

また、個人住宅であっても基本的には住宅ローンを使用するケースがほとんどですが、アパートやマンションになるとその可能性はさらに高まるでしょう。

そのため、もう一つの登記、抵当権設定登記が必要になります

抵当権設定登記とは、不動産を担保にした融資を受けるために、不動産に抵当権を設定するための登記手続きです。

抵当権設定登記は融資を受ける際に必要な手続きですが、所有権保存登記がされていない建物には抵当権の設定を登記することができないため、不動産は融資を受けることができません。

もちろん、個人住宅であってもほとんどの場合、抵当権設定登記は必要です。ただ、アパートやマンションとなると所有権保存登記や所有権移転登記に加え、抵当権設定登記は必須の登記となるため、予め予算を組んでおく必要があります

まとめ

新築の住宅、アパート、マンションを建設した等、その建物が自身の所有する不動産であることを法的に証明するための登記である所有権保存登記を申請します。後にトラブルに巻き込まれないためにも必ず行わなくてはならない登記です。

特に、不動産購入の際に住宅ローンを検討している場合、所有権保存登記をしていないと、抵当権設定登記もできず、住宅ローンを受けることが出来ません。そうした意味でも建物を建築、購入した際は、必ず所有権保存登記までを行いましょう。

所有権保存登記は、自身で行う場合は登録免許税、司法書士に依頼する場合は、登録免許税に加え報酬や経費も発生します。登録免許税は建物の価格や地域によっても異なります。また、一定の要件を満たしていれば軽減措置を受けることが出来る特例もありますので、必ず事前に確認しておきましょう

司法書士に依頼すれば、費用は高くなりますが、ストレスなくスムーズに手続きを進められるメリットもあります。

一般的に不動産の登記は専門家に依頼するものと思われていますが、実は専門家に依頼せず自分で登記申請する方も少なくありません。

そのためのサポートサービスもあります。登記申請を自分ですることで「節約したい」方はインターネットで「建物登記支援センター」の利用を検討してみてください。

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