滅失登記の費用はいくら?相場や自分で申請する場合の注意点

滅失登記

滅失登記は不動産登記の中では比較的やさしい登記といわれています。そのため専門家に依頼せず、自分で登記する方も少なくありません。自分で登記すれば、費用を大幅に抑えることができます。滅失登記を専門家に依頼した場合の費用と自分でする場合の費用、自分で登記する際の注意点についてお話ししたいと思います。

滅失登記にかかる費用内訳

滅失登記を専門家に依頼する場合、依頼先は土地家屋調査士になります。

登記簿には「表題部」と共に不動産(土地や建物)の所有権などが記載される「権利部」があります。
表題部に関する登記とは、建物でいえばその建物の所在地、構造(木造・鉄筋コンクリート造など)、種類(居宅・店舗など)、床面積など建物の物理的な状況を公にする登記で、登記簿の「表題部に関する登記」の代理申請ができる専門家は土地家屋調査士になります。

表題登記は、建物が存在していることを公にする登記のため、建物がなくなった際は、この表題登記をなくす必要があり、その登記申請が滅失登記です。

滅失登記をすると、表題部に、例えば「令和5年3月25日取壊し 令和5年4月15日同日閉鎖」というように記載されます。

滅失登記は表題部に係る登記のため、代理申請ができるのは土地家屋調査士のみで、司法書士は滅失登記の代理申請はできません

ちなみに、「権利部に関する登記」の代理申請ができる専門家は司法書士です。

さて、「日本土地家屋調査士連合会」という組織があります。土地家屋調査士の研修や広報活動を行っていますが、この会が「土地家屋調査士報酬ガイド」というパンフレットを出しています。そこには土地家屋調査士に依頼した際にかかる費用の目安が示され、令和元年度(2019年)のパンフレットによれば、滅失登記にかかる費用の全国平均額は4万7022円となっています。土地家屋調査士に依頼した場合、費用は「5万円程度」が目安になります

この費用は「報酬」と「実費」に区分され、「報酬」は、調査や測量業務、また、申請書の作成業務にかかる費用です。そして、「実費」は、現地調査にかかる交通費や申請に必要な書類の取得費などになります。

滅失登記に関する費用の相場

土地家屋調査士へ依頼する場合の費用相場と流れ

上でご紹介したように、土地家屋調査士に滅失登記を依頼した場合、報酬費用は「5万円程度が目安」になりますが、これは平均的な木造2階建ての住宅と物置の滅失登記を例にした数字です

解体した建物が1棟の場合と、複数棟ある場合では資料調査や申請書類作成にかかる手間や時間が違ってきます。そのため費用にも違いが出ます。そうした案件ごとの違いを考えれば一応の目安は「5万円程度」ですが、実費も考えると「3万円~6万円程度」と幅をもたせておいた方がよいでしょう。

実際、3万円程度ですむケースもあり、8万円、9万円と費用がかかるケースもあります。また、地域によっても費用に若干の違いがあります。

土地家屋調査士への「報酬」(調査、測量、書類作成業務にかかる費用)について、もう少し詳しく見てみましょう。滅失登記を土地家屋調査士に依頼する場合、次のようなステップを踏むことになります。

STEP1:土地家屋調査士に相談
そして、この後、土地家屋調査士が、次のステップで踏むことになります。(この「相談」は一般的には無料となっています)。
STEP2:必要書類の取得
STEP3:現地調査
STEP4:滅失登記申請書+添付書類の作成
STEP5:登記申請+登記完了証などの受領(申請から1週間~10日で完了)

STEP1:土地家屋調査士に相談
そして、この後、土地家屋調査士が、次のステップを踏むことになります。(この「相談」は一般的には無料となっています)。
STEP2:必要書類の取得
STEP3:現地調査
STEP4:滅失登記申請書+添付書類の作成
STEP5:登記申請+登記完了証などの受領(申請から1週間~10日で完了)

STEP1:土地家屋調査士に相談
そして、この後、土地家屋調査士が、次のステップで踏むことになります。(この「相談」は一般的には無料となっています)。
STEP2:必要書類の取得
STEP3:現地調査
STEP4:滅失登記申請書+添付書類の作成
STEP5:登記申請+登記完了証などの受領(申請から1週間~10日で完了)

土地家屋調査士事務所は、この5つのステップにかかるトータルの費用を示し「詳しい見積りはご相談の上」という形をとっていますが、各ステップごとの目安を示している事務所もあります。

それを見ると「STEP2:必要書類の取得」、「STEP3:現地調査」、「STEP4:滅失登記申請書+添付書類の作成」などについて、それぞれの実費は1万円~1万数千円の数字があげられています。するとトータルの数字は、やはり「3万円~6万円程度」になります。

自分で申請する場合の費用相場と流れ

滅失登記は、専門家である土地家屋調査士に依頼しなければならない、というわけではありません。

一般の方が自分で行うこともできます。この場合、滅失登記にかかる費用は、主に法務局や現地への交通費、また、申請に必要な書類の取得費など「実費」だけになり、費用を大幅に抑えることができます

自分で申請する場合、上にあげたステップの「STEP1:土地家屋調査士に相談」「STEP3:現地調査」が除かれ、

STEP1:必要書類の取得
STEP2:滅失登記申請書+添付書類の作成
STEP3:登記申請+登記完了証などの受領(申請から1週間~10日で完了)

という3ステップになります。

では、この3ステップを行うためにかかる費用を見てみましょう。

STEP1:必要書類の取得
滅失登記をする際に必要になる書類として、まず、あげられるのは建物の登記事項証明書です。これは「STEP2の滅失登記申請書+添付書類の作成」に関係する書類です。

滅失登記の申請書には、登記目的をはじめ(目的は「建物滅失」になります)、申請人の住所・氏名、また、連絡先の電話番号、そして、建物の所在、建物の種類、構造、床面積など解体した建物の物理的な状況を記載します。これらは、登記簿と同じ内容を記入しなければならないため、正確に記載するために建物の登記事項証明書が必要になり、その取得費が生じます。

登記事項証明書は最寄りの法務局、または、インターネットや郵送でも取得できます。
最寄りの法務局窓口で交付請求する場合は600円。インターネットで申し込み、最寄りの法務局窓口で受け取る場合は480円。オンラインで請求し、法務局から郵送してもらう場合は500円です。

STEP2:滅失登記申請書+添付書類の作成
滅失登記の申請書は、法務局からひな形をダウンロードできます。記載例もありますから、それに則って作成します。作業的には建物の登記事項証明書を正確に写すことになります。
不動産番号を記載したときは、住所、家屋番号、種類、構造、床面積記載を省略できます。

申請書に添付する基本書類は以下の4点になります。

建物滅失証明書
建物が取り壊されたことを証明する書類です(「建物取壊証明書」ともいいます)。 
解体業者の「代表者事項証明書」
解体業者を証明する書類です。
解体業者代表者の「印鑑証明書」 
代表者の印鑑証明書です。

以上3点は解体業者に用意してもらえますから、一般的にお金はかかりません。

地図
建物の位置を示すものです。住宅地図やグーグルマップを利用することも可能ですが、 どのような地図が必要か申請前に法務局に相談しておいたほうがよいでしょう。正確を 期すのであれば、地図証明書(土地の位置や形状などが記入された法的な地図=公図) を取得します。

STEP3:登記申請+登記完了証などの受領
申請は郵送でもできます。「登記完了証」とは、登記が完了しましたという通知書です。郵送で受取りたい場合は、法務局に申請書と添付書類を郵送する際、郵送に必要な額面の切手を貼った返送用の封筒を同封しておきます。

地図証明書も最寄りの法務局、また、インターネットや郵送でも取得できます。 地図証明書は最寄りの法務局で取得する場合、地図証明書は450円。インターネットで 申し込み、最寄りの法務局の窓口で受け取る場合は430円。法務局から郵送してもらう 場合は450円です。

以上、滅失登記を自分でする4ステップをとおしてかかる費用は、登記事項証明などの取得費が1000円程度、それに現地への交通費などを合わせても3000円以内ですむといえます。土地家屋調査士に依頼した場合にくらべ大きく費用を削減できます。

滅失登記費用を安く抑える方法と注意点

滅失登記を自分ですれば費用を大幅に抑えられますが、登記は法的なものですから、定められたとおりに行わなければなりません

建物の滅失登記は、滅失の日から 一月以内に申請しなければなりません。申請を怠ると10万円以下の過料に処すると法で定められています。(不動産登記法第57条)。

申請書の作成に際しては、

  • 申請人住所、氏名が、登記事項証明書記載の権利者の住所、氏名と同一であるか
  • 連絡先の電話番号(昼間に連絡がつく電話番号)を記載しているか
  • 建物に関する記録事項が登記事項証明書の記録内容と一致しているか

など、きちんと確認する必要があります。建物滅失証明書など添付書類がすべて揃っているかも確認しましょう。不備があると登記のやり直しになってしまいます。

申請書の大きさはA4サイズ、横書きです。添付書類もA4サイズに合わせます。申請書のひな形は法務局だけではなく、インターネット上にもありますから、それをダウンロードしてパソコンで記入することもできます。手書きの場合は黒のボールペンなどを使用します。鉛筆や消えるインクでの記入は不可です。

申請前に法務局で相談するのもよいでしょう。その場合、電話で相談日時を予約します。ただ、法務局の業務は、平日の午前8時30分から午後5時15分までです。(法務局に出向いて申請をする際もこの時間帯になります)。

相続した建物を解体した場合の滅失登記については、その建物の所有者が亡くなっていることを証明する書類や、滅失登記をする人(申請人)が相続人であることを証明する書類なども必要になります。この場合、自分で滅失登記をするのはやや難しくなります。申請前にどのような書類が必要か法務局で相談するとよいでしょう。

まとめ

費用内訳土地家屋調査士自分で申請
専門家報酬一式
必要書類取得一式1,000円程度
現地調査(交通費)一式2,000円程度
申請書+添付書類作成一式
交付申請一式
合計50,000円程度3,000円程度
一般的戸建て住宅の場合

滅失登記は、建物を取り壊してから一月以内に申請する必要があります。その際、専門家に依頼する場合の依頼先は、土地家屋調査士になります。土地家屋調査士に依頼した場合の費用相場は「5万円が目安」になりますが、案件ごとの違いを考えれば「5万~6万円」の幅をもって考えたほうがいいでしょう。

滅失登記は、不動産登記のなかでは比較的やさしい登記です。一般の方が自分ですることもできます。その際に必要になる書類は、
・滅失登記申請書
・申請書に記載するために必要な建物の登記事項証明書

そして、添付書類として、
・建物滅失証明書
・解体業者の代表者事項証明書
・解体業者代表者の印鑑証明書
・地図
が必要になります。

滅失登記は、他の不動産登記と同じく、正確に記載すること、添付書類をきちんと揃えることが求められますが、本人申請される一般の方も増えてきています。自分で申請すれば費用を大幅に抑えられますから、チャレンジしてみるとよいでしょう

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