自身が所有する建物や相続した建物を解体する、もしくは地震や火災などによって倒壊してしまった際には役所に滅失登記の申請をしなければなりません。その際に必要となるのが滅失登記の申請書です。今回は、滅失登記をする際に提出する申請書の書き方や注意点、そして滅失登記を委任する場合の委任状の書き方についてもお伝えします。また、申請書や委任状の入手方法についても紹介しますので、これから滅失登記を行う方はぜひ、参考にしてください。
建物滅失登記とは
建物を建てた際には、建物の所有者を明確する建物表題登記が義務付けられています。また、増改築や構造の変更を行った際には、建物表題変更登記を申請しなくてはなりません。
これらの登記は、所有者が公にされていないことで起きる不動産トラブルを防ぐのはもちろんのこと、固定資産税の評価にも影響を与えるため、必ず行う必要があります。
そして、建物を解体した際や倒壊してしまった際にも登記申請が必要であり、それが滅失登記です。
滅失登記は、不動産登記法第五十七条に基づいた義務であり、建物がなくなってから一月以内に登記申請を行わなければなりません。もし怠った場合、不動産登記法第百六十四条において、10万円以下の過料が科されます。
また、滅失登記を怠れば、法律違反になる以外にもさまざまなデメリットが考えられますが、なかでも大きいのは不動産トラブルです。
たとえば、所有している建物を解体して土地を売却しようと思っても、登記簿上はその土地には建物が建っていることになるため、スムーズに売却はできません。
さらに元々の建物をローンで購入した場合、融資を行った金融機関が抵当権を持っているため、担保とした建物を勝手に取り壊した場合、抵当権者は弁済期を待たずに貸付金の返還を求めることができるため、例えば土地の所有権さえも失ってしまうリスクがあります。
ほかにも地震や火災で建物が亡くなった場合、滅失登記をしなければ、建物は登記簿上存在していることになるため、保険金の支払いを拒否されるかもしれません。
滅失登記をしないことで、法律違反になる以外にもさまざまなトラブルに巻き込まれるリスクがあるため、必ず取壊し後一月以内に滅失登記申請することをおすすめします。
土地の滅失登記が必要となる場合も
土地を借りて建物だけを建てているといった場合を除き、土地の所有者でもあった場合、建物の滅失と同時に土地の滅失登記は必要になるのでしょうか。実は、土地の滅失登記をするケースはほとんどなく、建物の滅失登記だけを申請するのが一般的です。
滅失登記とは、登記していたものがなくなったことにより申請の義務が生じます。建物は解体や自然災害、火災などで物理的になくなりますが、建物がなくなっても土地がなくなるわけではありません。
たとえば山奥の土地を切り開いてダムを建設する、台風や大震災により土地の形態が永続的に変わってしまうといった場合は土地の滅失登記が必要です。
しかし、ほとんどの場合、建物がなくなっても、土地自体はそのままのため、土地の滅失登記を申請することはまずないと考えてよいでしょう。
申請書・委任状のひな形のダウンロード
滅失登記の申請を行う場合、解体する建物がある場所を示す「位置図」。建物が確かに解体されたことを証明するための「建物滅失証明書」。解体を行った業者が発行する「証明書」や「印鑑証明書」などさまざまな書類の提出が求められます。
そして、もっとも重要な書類が滅失登記の申請書です。建物の所有者が自分で申請を行う場合も必ず提出する必要があります。
滅失登記申請書のひな形は法務局サイトに
PDFのひな型
建物滅失登記の申請書は、決まったフォーマットはなく、必要事項が記載されていれば、手書きでもパソコンを使って作成しても構いません。ただ、より簡単に作成したいのであれば、法務局のWebサイトからひな型をダウンロードするのがおすすめです。
PDFのひな形ダウンロードはこちらから行えます。 法務局:建物滅失登記申請書(PDF)
Wordのひな形
法務局ではPDFのほか、Wordや一太郎形式のひな型もダウンロードできます。PDFはダウンロードした後、手書きで作成しなくてはなりません。しかし、Wordであればパソコンだけで作成できるので、少しでも手間をかけずに作成したい場合は、Wordのひな型がおすすめです。
Wordのひな型ダウンロードはこちらから行えます。 法務局:建物滅失登記申請書(Word)
委任状は法務局のWebサイトでは提供されていません。そのため、一般的な記載方法を後述しますので、参考にして手書きもしくはWordで作成してください。
滅失登記申請書の書き方
では実際に滅失登記申請書の書き方について、法務局からダウンロードしたひな型を参考に解説します。
登記の目的
法務局のひな型であればすでに記載されているのでそのままで問題ありません。自ら手書きで作成する場合は、「建物滅失」と記載します。
添付情報
添付情報とは、登記申請書に添付して提出する書類で、法務局のひな型では、「建物滅失証明書」と記載されているものです。
建物滅失証明書とは、建物が確かに解体されたことを証明するもので、解体業者に依頼して作成してもらうもののため、自分で作成する必要はありません。
なお、建物滅失証明書の後に記載されている、会社法人等番号とは、解体した業者の会社番号です。もし、解体を請け負ったのが個人の場合は、会社法人等番号の代わりに、個人の名前と印鑑を押印します。
また、ひな型には記載されていませんが、添付情報は「建物滅失証明書」以外に法人であれば代表者の資格を証明する「登記事項証明書」。そして登記所で交付される代表者の印鑑証明書(個人の場合は印鑑証明書のみ)も必要です。
ただし、法人は会社法人等番号を記載すれば、登記事項証明書および代表者の印鑑証明書(現在登記所に印鑑を登録している場合に限る)の添付は省略しても構いません。
申請日
法務局に申請書を提出する年月日を記載します。また、申請書を提出する法務局もしくは地方法務局、支局、出張所の名称も合わせて記載しましょう。
申請人
通常、登記事項証明書の権利部の所有権に関する事項に記載されている権利者を申請人として記載します。
ひな型には「連絡先の電話番号」としかありませんが、電話番号以外に申請人の名前と申請人の住所も記載しなくてはなりません。
なお、申請人の現住所が登記事項証明書に記載されている住所と異なる場合は、「登記記録上の住所から現在の住所までの異動の経過が明記されている」公的機関が発行している書類を申請書に添付し、「添付情報」の欄には「変更証明書」と記載する必要があります。
★ 新住所の一つ前までの旧住所は住民票に記載されます
★ 登記簿記載住所から新住所の間に「複数回」住民票を移動している場合は、その間全ての住所が記載されている戸籍の附票の写しになります。
取得するにもお金がかかりますので、市町村役場で相談、確認のうえで取得されるとよいでしょう。
不動産番号
不動産番号とは、土地一筆、建物一戸ごとに付与されている13桁の英数字で、登記事項証明書や登記事項要約書の表題部に記載されています。その英数字をそのまま記載してください。
建物の表示
建物の表示で記載する箇所や書き方は次のとおりです。
所在:解体前の建物があった場所の住所
家屋番号:不動産登記法上、法務局が登記される建物に付与する、建物を特定するための番号
種類・構造・床面積:現在の登記記録(登記事項証明書)に記録されている建物の物理的状況
登記原因及びその日付:日付は建物滅失証明書に記載された日を記載します。登記原因は老朽化による取壊しや、地震による倒壊などありますが、一般的には「取壊し」と記載します。火災による消失の場合は「焼失」と記載します。わからない場合は、建物滅失証明書を確認するか、法務局に相談してください。
なお、不動産番号を記載すれば、所在、家屋番号および種類、構造、床面積の省略も可能です。
建物滅失登記申請書の記載例
法務局のWebサイトでは、建物滅失登記申請書の記載例もダウンロード可能です。建物滅失証明書の記載例もあるので、解体業者から受け取った際は、記入例と照らし合わせながら不備がないかを確認してください。
注意点
建物滅失登記申請書の作成自体はそれほど難しいものではありません。法務局のWebサイトからひな型と記載例をダウンロードし、同じように記入するだけです。
注意点としては、建物滅失証明書はできるだけ早めに依頼すること、申請人の現住所が登記されている住所と異なる場合も早めに住民票や戸籍の附票の写しを用意することです。
建物滅失登記は解体後、一月以内に申請しなくてはなりません。そのため、提出する書類を早めに集めて申請すれば、万が一、不備があっても対応が可能です。できるだけ余裕を持って準備を進められるようにしましょう。
委任状が必要となるケース
建物滅失登記は、解体した建物の所有者が申請するのが基本ですが、所有者以外が申請することも可能です。ただしその場合は、委任状が必要になります。
土地家屋調査士に依頼するのが一般的ですが、所有者の家族や建物を相続した人が滅失登記を行うケースも少なくありません。
ほかにも、前の所有者から名義変更していない中古住宅を購入し、解体した場合も前の所有者から委任状が必要です。
委任状の書き方
委任状も建物滅失登記申請書同様、決まったフォーマットはありません。次に挙げる3点を記載すれば委任状として効果を発揮します。
- 委任する人の住所・氏名記載の場合は押印または自筆署名の場合は押印不要、委任を行った年月日
*登記所によっては、自筆であっても押印を求められる場合があるため、認印を押印しておくほうが無難かもしれません - 委任される人(受任者)の住所・氏名
- 委任の内容
建物滅失登記申請委任状の記載例
一例としては、委任をする人(①委任者/建物所有者の住所、氏名、押印)、委任される人(②受任者/名前と住所を記載)とし、下記のことを記載します
受任者②を記載
「私は、上記受任者に、下記記載の登記申請および登記申請取り下げの一切に関して委任します」と文面を記載し、その下に次の項目を記載します。
登記の目的/建物滅失登記、登記の原因/建物滅失証明書記載日、建物の表示/取り壊した建物の登記簿記載内容(家屋番号、種類、構造、床面積)
最後に①を記載します
押印は実印でなくても構いません。シャチハタ以外の認印を押印してください。
注意点
基本的に建物滅失登記を代理人に委任する場合、建物滅失登記申請書を用意する必要はありません。
しかし、委任するにしても、自分でするにしても、建物の表示内容を記載する必要がありますので、登記済証が手元になければ、法務局で登記事項証明書を取得し、登記簿謄本と相違なく記載できるように準備が必要です。
まとめ
建物滅失登記申請は必要書類さえ集めてしまえば、申請書の記載自体はそれほど難しいものではありません。それは委任をする場合でも同様です。
ただ、建物を解体した場合、さまざまな雑事が重なることもあり、一月以内という時間制限に間に合わせるのが難しいケースも少なくありません。
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