不必要なトラブルを避けるためには、不動産登記が重要です。しかし、登記されていない建物も実際には存在します。これらの建物は「未登記建物」と呼ばれ、多くの場合、様々な問題を引き起こす可能性があります。
この記事では、未登記建物とは何か、それがなぜ問題となるのかを解説します。さらに、未登記建物を登記する方法、登記手続きをするための選択肢、そして建物登記の確認方法についても詳しく説明します。未登記建物に関連する問題を解決し、より明確な土地・建物管理を行うための一助となれたら幸いです。
未登記建物とは
【不動産】とは、民法では「土地および土地に定着している物をいう(86条1項)」と規定されており、【不動産登記】とは、不動産に対する権利関係などを公に明らかにするために設けられた制度のことで、不動産を取得してから一月以内の登記(以下、【新築登記】という。)が法的に義務付けされており、その義務を果たしていない建物を一般的に【未登記建物】といいます。
未登記建物は、登記簿上には存在していないが所在地には存在している建物を指します。
しかしながら、固定資産税が課せられるため、未登記であることに気がつかない所有者も事実としています。その要因は、固定資産税は「所在地に建物が存在している」事実に基づき課税される制度だからです。
建物に対する権利は、不動産登記である建物表題登記(義務)から所有権保存登記(任意)までして初めて確定します。
未登記建物の所有者が亡くなった場合、所有権者(相続人等)の確認が困難であり、売買や相続手続きが複雑になるなどの問題を引き起こします。
現在の所有者が引っ越しなどで所在不明になるケースもあります。登記していれば所有者から経緯をさかのぼることができますが、未登記建物の場合は誰が所有権者か、誰が相続や譲渡を受けたかなどの正確な情報がなく、最終的に所有者不明になることもあります。
そのため所有者自身が、所有する建物が正しく登記されているかを確認し所有権を守るためにも登記手続きを行うことが重要です。
建物登記をしていないと罰則に
不動産登記における建物表題登記は所有者としての義務となります。これは、所有者の明確化とともに、不動産の売買や相続などにおけるトラブルを防ぐための重要な手続きとなります。
特に2024年度からは、不動産登記に関する法律が改正され、相続登記が義務化されることが決定しました。
参考:あなたと家族をつなぐ相続登記 ~相続登記・遺産分割を進めましょう~(法務省)
今ままでは相続後の不動産登記は原則として任意でしたが、相続が発生した時から一定期間内に登記することを義務付ける、民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正などに関する要綱案(案)が罰則規定も含め2021年に決定され、2023年4月より内容に応じ順次施行されています。
特に相続した不動産について必要な相続登記については、2024年4月からの新たな法律により登記が義務化されるため、所有者や相続人は登記手続きを適切に限られた時間の中で行う必要があります。期間内に登記をしないと罰金などの制裁が課せられるため法的な問題に対するリスクが高まります。
以上の理由により、相続登記に含まれる建物の登記も適切な管理と義務が法的な問題を避けるために重要です。
未登記建物を登記する方法
未登記建物の登記方法は新築登記と同じで、基本的には登記権利人(所有者や相続人、権利者の代理人)が適宜必要書類を揃えて法務局へ申請をおこないます。
登記は大きく分けて
・表題部の登記
・権利部の登記
の2つで構成されており、各部に係る登記手続きが必要です。
表題部の登記
不動産登記は、建物表題登記と呼ばれる手続きをして初めてその不動産に対する登記簿が作成されます。登記簿には、建物の所有者(建築主)、所在地、種類、構造、床面積などが記録されます。
ここで注意すべきは、建物の存在と建物所有者が公に明示されるだけで、所有者の権利が確定される登記ではないということです。
表題部の登記を行うには通常、建築主、種類や構造といった建物に関する事項を明確にした公的認可書類である建築確認書(確認通知書)、所有者の住民票が必要です。相続による登記の場合は、建築主と申請人の関係を示す書類なども必要です。
建築確認書が手元にない場合は、法務局に相談のうえ建築許可書や使用開始届出書、固定資産税評価明細書など建築確認書に代わる公的発行書類が必要になります。
権利部の登記
建物表題登記で表題部ができてこそ権利部を作ることができますが、権利部を作るために行う最初の登記を「所有権保存登記」といいます。
所有権保存登記とは、建物の所有者の権利を法的に確定させる登記で1度きりの登記です。所有者の権利が確定してこそ、その他の権利(賃貸権、抵当権など)を設定し、それを公にすることができます。
所有権保存登記の申請ができるのは、表題部所有者、表題部所有者の相続人や一般承継人です。
相続において所有権保存登記をなされる場合は、建築主(被相続人)との関係性や遺言書、相続証明書など申請人の権利を証明する書類や法律的な知識が必要となるため、権利部の登記をする資格のある専門家(司法書士や弁護士)に依頼するのが一般的です。しかしながら、所有者本人が申請することも可能です。
2024年度からは相続登記が義務化されるため、相続が発生した場合には特に迅速な登記手続きが求められますが、以上の登記を行うことで、土地と建物の権利者の明確化、権利関係の証明、売買や相続など手続きの円滑化などが期待できます。
建物登記手続きの選択肢
前述した通り不動産を取得してから一月以内に建物表題登記をすることが法律で義務付けられています。不動産に対する登記簿は、建物表題登記をして初めて作られます。一般的にその登記の代理申請ができるのは土地家屋調査士で、所有権を確定させるために行う所有権保存登記の代理申請ができるのは司法書士になります。
未登記建物を登記するのは、建物を建てた所有者の義務ですが、所有者がお亡くなりになっていた場合は、相続人が相続人名で登記を行います。
建物が登記されており、所有者がお亡くなりになった場合は、被相続人から相続人へ所有権者名を変更する【所有権移転登記】を行います。万が一、所有権保存登記がなされていなければ相続人名で【所有権保存登記】を行います。
未登記建物を相続した場合も、新築登記と同じく一般的に建物表題登記を土地家屋調査士、所有権保存登記を司法書士に依頼して登記をおこないます。
不動産登記の手続きを進める方法は主に三つあります
・土地家屋調査士に依頼する
・司法書士に依頼する
・自分で登記申請する
それぞれに利点と欠点がありますので、選択肢から自分にあった最適な方法を選びましょう。
土地家屋調査士に依頼する
土地家屋調査士は、所有者に代わって「表示に関する登記」につき必要な土地又は建物の調査、測量、申請手続を業とすることができると定められている、不動産登記における「表題部に関する登記」の専門家です。
依頼する際は、建物表題登記申請に関する委任状や住民票、印鑑証明書、建築確認書など委任申請に必要な書類を渡します。
自分でするより報酬など費用はかかりますが、登記申請に必要な書類作成や情報収集などを請負ってくれるので登記がスムーズに進みます。
司法書士に依頼する
司法書士は、設定登記や商業登記など不動産登記における「権利部に関する登記」の専門家です。
依頼する場合は、所有権保存登記に関する委任状や住民票、印鑑証明書など委任申請に必要な書類を渡します。
自分でするより報酬など費用はかかりますが、登記申請に必要な書類作成や情報収集などを請負ってくれるので登記がスムーズに進みます。
自分で登記申請する
法律では建物の登記手続きは、所有者が行うこととされています。
しかしながら、登記申請に必要な建物図面や申請書作成には、多少の法律知識が必要です。まず、建物表題登記申請に必要な基本書類をご説明します。
1登記申請書
法務局に対する登記の申請書です。登記の目的が今回の場合は「建物表題登記」になります。建築確認書など公的認可書類を根拠にした建物の所在や構造について記載します。
2図面
各階平面図、建物図面を書式に従い作成します。建築確認書など公的認可書類を根拠にした建物の形状、床面積、敷地と建物が配置された図面を作成します。
4所有権証明書
申請人の住民票が必要です。
3住民票
引渡証明書、譲渡証明書、建築事業者からの印鑑証明書など適宜必要です。
これらの書類を準備し、申請人が法務局へ提出することで登記手続きが進みます。しかし、自分で申請を行う場合は、図面の書き方や決まった書式には注意が必要です。
法務局のサイトをはじめ、自分で建物登記手続きを行う方法は検索すれば紹介されていますのでしっかりと準備をして登記手続きを行ってください。
建物が未登記であることが発覚したタイミングがどのようなシチュエーションなのかによりますが、費用を抑えたいのであれば義務である建物表題登記を自分で行う方法が良いでしょう。
しかしながら、相続から派生する登記で複数の相続人が存在した場合などは専門知識が必要のため土地家屋調査士への依頼がおすすめです。
建物登記の確認方法
建物の登記状況を確認するには登記簿謄本や登記事項証明書で確認をします。名称が異なる(代わった)だけでどちらも証明内容は同じですが、その違いは以下の通りです。
現在は、登記事項証明書で統一されています。
「登記事項証明書」…登記事務をコンピュータで処理している登記所では,登記事項は磁気ディスクに記録されており,「その内容を用紙に印刷し証明」します。※現在
「登記簿謄本」…登記事務をコンピュータで処理していない登記所では,登記事項を直接登記用紙に記載しており,「その用紙を複写して証明」します。※昔
登記情報は、法務局や登記情報提供サービスサイトで閲覧する方法が一般的ですが、登記事項証明書には、2種類あります。
「全部事項証明書」…昔の不動産登記簿謄本で、登記簿上の情報が全て記載されています。
「一部事項証明書」…昔の不動産登記簿抄本で、登記簿上の一部の情報が記載されています。
次に、登記事項証明書の取得方法についてみてみましょう。
法務局(登記所)で取得する
地方法務局やその出張所に設置されている「登記事項証明書交付申請書」という書類に必要事項を記入、全部事項証明書か一部事項証明書かを選択して「窓口に提出して窓口で受取る」方法です。窓口で収入印紙600円分を購入して申請書に貼付します。
オンライン請求で取得する
「登記・供託オンライン申請システム」というサービスを通じて「オンラインで請求して 郵送で受取る」方法です。
IDの登録手続きなどが必要ですが、その後の手続きなどが簡易化できます。申請手数料はインターネットバンキングやATMなどを利用した電子納付で500円を納付します。
登記情報提供サービスで取得する
「登記情報提供サービス」は、登記所が保有する登記情報をインターネット経由で確認、 手元で印刷(受取)する有料サービスです。利用するには登録審査、登録費用がかかります。書類の取得費用は取得書類により異なり、取得費用の支払いについては、個人の場合は登録したクレジットカードへ請求されます。
専門家から取得する
不動産登記の確認は、土地家屋調査士、司法書士どちらでも確認ができます。依頼費用は、依頼先の事務所によって異なりますが、取得方法は上記の登記情報提供サービスや法務局になりますのでその取得費用と交通費等の経費を見込むとよいでしょう。
まとめ
建物登記は、不動産の所有権を明確にするための重要な手続きです。しかし、一部の建物では登記がなされていないまま放置されている場合があります。
未登記の建物を登記する方法には、表題部と権利部の登記があります。表題部の登記では建物の基本的な情報が登記され、権利部の登記では所有権者の情報などが登記されます。
建物登記の手続きは自分で行うこともできますが、専門的な知識と手続きが必要であるため、土地家屋調査士や司法書士に依頼することも一般的です。
これらの専門家はそれぞれ異なる領域の登記手続きを代理ですることが可能で、状況によって最適な選択肢を選ぶことが重要です。
また、建物の登記状況を確認するには、法務局へ直接訪問する方法やオンラインで確認する方法、専門家に依頼する方法などがあります。
2024年4月からは、相続登記が義務化され、罰則が設けられます。そのため、未登記の建物がある場合は早めに登記手続きを行いましょう。